資産の流動化(証券化)とは?分かりやすく解説!

金融に関心のある方なら、「(資産の)流動化」や「証券化」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

モノであるはずの資産が「流動化」するとはどういう意味か、なかなかピンと来ない人も多いかと思います。


ここでは資産の流動化(証券化)の基本や、メリット・注意点について解説します。


資産の流動化(証券化)とは?キホンを解説

資産の流動化とは?

資産の流動化(証券化)とは?

「資産の流動化」とは、企業が保有する資産を投資家に小口販売する、資産切り離し・資金調達の手法です。

資産を証券に変えて売却することから、資産の「証券化」とも呼ばれます。


流動化で資産を切り離すことで、企業は負債を増やすことなく資金調達できます。

債権のように流動性の低い(売却の難しい)資産であっても、比較的簡単に処分できるのが大きな特徴です。


投資家サイドから見れば、本来なら相当規模の資金がなければ投資できないような案件にも小口での投資が可能になるので、投資機会が増加します。

さらに販売される証券は格付け会社による外部の評価を経ているので、リスクを勘案しながら投資できます。


これによって投資機会だけでなく、投資の選択肢の幅が広がります。

企業による資産圧縮・資金調達の方法として、このほかファクタリングと呼ばれる手法もあります。

なぜ資産の流動化が登場したの?

90年代のバブル崩壊まで土地に代表される不動産は、価値が上がり続けると考えられていました。

そのため土地を保有している企業が評価されて、銀行も土地資産を担保として、積極的に融資を行っていました。


しかしバブル崩壊によって地価が暴落したことで土地神話は崩壊し、企業評価の基準も変化しました。

例えば総資産利益率(ROA)という、少ない資産でどれだけ収益を上げているかを示す指標が重視されるようになり、不要資産の処分や効率的な経営が求められるようになりました


資産を処分する方法として資産売却は以前からありましたが、流動化という選択肢が増えたことで、企業の側も多様な資産の切り離しが可能になりました


特に銀行の場合、1993年にBIS規制と呼ばれる銀行の自己資本比率に関する規制が、日本で導入されました(国際業務を営むには8%以上が必要)。

この基準を満たすためにも保有資産の切り離しが急務となり、当時の都市銀行や地銀は流動化を活用することで保有資産を減らし、自己資本比率の向上に勤めました。


ちなみに金融機関による保有資産の証券化は、現在でも積極的に行われています。

たとえば「フラット35」は、民間の金融機関が出す住宅ローンを住宅金融支援機構が買い取り、その住宅ローンを裏付けに証券化する、という住宅ローン商品です。


一方の投資家サイドにも、変化がありました。

2007年より信用リスクの計算の際に、格付けを利用することが国際的に承認されるなど、格付け会社による証券の格付けが活発化したのです。


これにより投資家は、格付けという外部評価に基づいた証券への投資が行えるようになりました。

<外部の関連サイト>:格付格差の現状と背景|日本銀行

ただし格付けは絶対的な指標ではありません。リーマンショックの要因の一つは格付けの評価ミスだとも言われています

流動化(証券化)の市場規模は?

次に日本国内の、流動化(証券化)の市場規模を確認しましょう。

下の図をご覧下さい。

日本国内の、流動化(証券化)の市場規模

2006年度に発行件数・発行金額ともに過去最高だったのが、2010年度までに急落しているのが見て取れます。

これは言うまでもなく、リーマンショックの影響です。


その後、市場は持ち直して2012年度を底に、流動化の市場規模は再び増加傾向に転じています

これはアベノミクスなどの景気回復(もっと言うと、異次元緩和)が影響していると思われます。


2020年3月からの新型コロナ肺炎の流行により、今後どうなるか予想しづらいですが、少なくとも日本では流動化(証券化)が、一定の市場規模まで成長していることが読み取れます。

<外部の関連サイト>:証券化市場の動向調査 | 日本証券業協会

流動化(証券化)の対象となりうる資産は?

先ほどの日本証券業協会の資料によると、2018年度(2018年4月から2019年3月)に日本の証券化商品の裏付けになった資産の内訳は、以下のようにっています。

日本の証券化商品の裏付けになった資産の内訳

RMBS: 住宅ローン債権、アパートローン債権(Residential Mortgage Backed Securities)
ショッピング・クレジット: ショッピング・クレジット債権、クレジットカード債権、オートローン債権



割合として最も大きいのがRMBSの約59%で、やはり住宅ローン債権などは金額の割合が大きいです。

先ほど挙げた「フラット35」と呼ばれる住宅ローン商品は、流動化の裏付け資産の代表例と言えるでしょう。


次いでショッピング・クレジットが32.5%で、信販会社によるショッピング・クレジット債権やカード会社のクレジットカード債権が対象です。

<関連記事>:ショッピングローン(ショッピング・クレジット)とは?


表にはありませんが、3位はCDO(企業向け貸付債権など)ですが、だいぶ落ちて全体の3.8%です。

証券化(流動化)の対象になりうる資産は多様ですが、上の表から分かる通り、実際に流動化される資産のおよそ8割強はRMBSとショッピング・クレジットで占められます。


この他、流動化の対象となりうる資産としては、以下が挙げられます。

その他、流動化の対象となりうる資産
  • 商業用不動産担保ローン債権、商業用不動産(CMBS, Commercial Mortgage Backed Securities)
  • 企業向け貸付債権、社債、CDSなど(CDO, Collateralized Debt Obligations)
  • リース料債権
  • 消費者ローン債権、カードローン債権
  • 売掛債権、手形債権
  • 基金債権、劣後ローン債権、事業キャッシュフロー、診療報酬債権等

また稀なケースではありますが、知的財産権や特許権も対象になる可能性があります。

例えば2002年には、映画会社の松竹が「男はつらいよ」シリーズの一部を資産として流動化しました。

資産の流動化の仕組みは?

資産の流動化の仕組みは?

流動化(証券化)は、裏付けとなる資産によってスキームも違ってきます。

ここでは住宅ローン債権の証券化を例に、資産流動化の仕組み(流れ)を見ていきます


住宅ローン債権の流動化における主要プレイヤーは、以下の通りです。

・金融機関: オリジネーター兼サービサー
・信託銀行: 受託者
・年金組合など: 投資家



個人利用者向けに住宅ローンを提供している金融機関が、住宅ローン債権を流動化したいとします。

なお流動化の裏付けとなる資産を提供するプレイヤーは、「オリジネーター」と呼ばれます。


(オリジネーターである)金融機関は、住宅ローン債権を委託者である信託銀行に信託します。

その代わりに、金融機関は信託銀行から「信託受益権」を取得します。

<関連記事>:信託銀行とは?わかりやすく解説


信託受益権とは資産から得られる収益を得る権利のことで、この場合で言うと住宅ローンの返済元本と利息分になります。

なお信託受益権を金融機関に付与するにあたり、(優先的に収益を得られる)「優先受益権」と(収益配分を後回しにされる)「劣後受益権」に分けられます。


これにより事実上、住宅ローン債権(資産)を金融機関から切り離した形になります。

金融機関は優先受益権のみを小口化(証券化)して、アレンジャー(証券会社)を通じて投資家に売却し、代金を受け取ります。


優先受益権のみを売却するのは、住宅ローン債権の一部が返済されなくても、投資家への元本・利回りに影響が出ないようにするためです。

劣後受益権は、引き続き金融機関が保持します。


委託者(信託銀行)は、外部の会社に住宅ローンの回収を委託します。

この役割を担うプレイヤーは「サービサー」と呼ばれ、たいていは金融機関が受け持ちますが、金融機関とは別の会社が受け持つ場合もあります(今回は、金融機関がサービサーも兼ねています)。


サービサーである金融機関は住宅ローン利用者から返済を受け、その代金を信託銀行に渡し、信託銀行は投資家に配分します。

これが住宅ローン債権の証券化の、一連の流れです。

<関連記事>:債権回収会社とは?借金の回収・取り立て代行の仕組み

上はあくまで一例で、信託受益権をSPCに売却し、SPCのバックファイナンスとしてノンリコースローンを活用するスキームもあります

証券化には倒産隔離が必要

証券化には倒産隔離が必要

上の例では、住宅ローン債権を信託銀行に信託して、金融機関は信託受益権を取得しています。

でも住宅ローン債権の優良部分を投資家に売却するのではなく、なぜ信託受益権にする必要があるのでしょうか?


仮に信託受益権を設定せず、住宅ローン債権(の優良部分)をそのまま証券化する場合を考えてみましょう。

金融機関の経営が順調で住宅ローンの回収に問題なければ、投資家への配当もキチンと行われ、何も問題ありません。


ですが、金融機関が経営危機に陥ったとしたら、どうでしょうか?

その場合に債権者たちは、金融機関の優良資産である住宅ローン債権の差し押さえに掛かるでしょう。


ここで注意したいのは、投資家が買ったのは住宅ローン債権の返済元本と利息を受け取れる権利であって、住宅ローン債権そのものではない点です。

住宅ローン債権そのものは金融機関が保持していて、管理・回収している状態です。


住宅ローンの資産価値を見越して投資したのに、(直接関係のない)金融機関の破たんにより証券化商品が紙くずになったら、投資家には理不尽な話です。

こうした事態を防ぐために行われるのが、信託受益権の設定です。


先の例で言えば、信託受益権を設定することで、仮に金融機関が破たんしても他の債権者は住宅ローン債権に手出しができず、投資家が守られることになります。

証券化(流動化)では、オリジネーター(資産の元所有者)の経営が影響を及ぼさないよう資産を保全する施策が取られ、これを「倒産隔離」と呼びます。


つまり倒産隔離を実現するために、上で紹介した信託受益権の設定がなされている訳です。

過去、2001年に経営破たんしたマイカルで、この倒産隔離の処理が十分にされてないと破産管財人から指摘されたことがありました



資産を流動化(証券化)する企業のメリットは?

資産を流動化(証券化)する企業のメリット

資金調達の手段が多様化する

過去には資産売却による資金化と言えば、土地や建物といった不動産に限られていました。

ですが流動化という手段が登場したことにより、それまで資金化が難しかったような資産、住宅ローン債権やアパートローン債権、ショッピング・クレジットといった消費者向け債権などの資金化も容易になりました


また証券化の際に重視されるのは資産の収益力なので、信用力があまり高くない企業でも好条件で資金化できる可能性があります。

こうした資産価値に依拠した資金調達を、「アセット・ファイナンス」と呼びます。

一方で企業の信用力に依拠した資金調達は「コーポレート・ファイナンス」と呼ばれます

資産のスリム化・財務指標の改善

近年の企業評価で重視される指標の一つに、ROA(総資産利益率)があります。

ROAは当期純利益÷総資産×100で算出されます。


具体例として、以下の2社を比較してみましょう。

・A社 当期純利益20億:総資産100億円
・B社 当期純利益20億:総資産500億円


計算式に当てはめるとA社・B社は共に純利益20億円なのに、A社のROAは20%、B社は4%になります。

このことから利益に対する総資産を減らすと、ROAが高まることが分かります。


証券化によってオフバランス化に成功し、ROAはもちろん、自己資本比率など様々な財務指標の改善が見込めます。

90年代に都市銀行や地方銀行が、証券化を活用することで資産の切り離しに勤め、自己資本比率を改善させた話は、先ほど紹介した通りです。

資産の保有リスクを移転できる

「資産は保有するもの」・「不動産の価値は上がり続ける」という考えは、90年代の不動産バブル崩壊を機に変わりました。

景気悪化で財産価値が下落する可能性もありますし、自然災害などによる下落リスクも常に付きまといます。


そうした資産の保有リスクを移転できることは、流動化の大きなメリットと言えます。

自社ビルなどの不動産は流動化した後もテナントとして使い続けることで、事業運営の不便を感じることなく、保有リスクを減らすことができます

ただし自社ビルを持つことをステータスとする会社もあり、そういう会社はよほど経営不振にならない限り自社ビルを手放さない、といったケースもあります



資産を流動化(証券化)する際の企業の注意点は?

他のプレイヤーに対する手数料が発生する

流動化のプロセスでは、多くのプレイヤーが登場し、それぞれに対して手数料がかかります

例えば不動産の資産価値の調査には不動産鑑定士への依頼が必要ですし、債権売却に法的に問題がないかは弁護士によるリーガルチェックが必要です。


また特定目的会社が必要なスキームの場合、会社登記などの手続きを委託するとなると、司法書士などへの手数料が発生します。

投資家に対する証券化の際にも、手続きをサポートしてくれる証券会社へのマネジメント料が発生します。

その他にも税理士や建築士など、非常に多くのプレイヤーに対する手数料が発生します

手続きに時間がかかる

上で見たように、流動化の仕組みは複雑で、関わるプレイヤーも多岐にわたります。

そのため一連の手続きが完了するまでには、ある程度の時間がかかります


地域によっては証券化に関するノウハウを持つ会社が少ない場合もあり、案件組成にさらに時間を要することがあります。

とはいえ証券化の流れはある程度は定型化されているので、証券化のノウハウのある金融機関なら、ある程度は時間の短縮もできます。

資産によっては流動化できないこともある

証券化できる資産かどうかは、証券化した際の投資価値という観点から判断されるため、証券化に向いてない資産も存在します。

例えば不動産なら、どんなホテルやビルでも良い訳ではありません。


一定以上のテナントが入っていることが最低条件ですし、収益の将来的な安定性も重要視されます。

ローン債権にしても、あまりに延滞率が高いと流動化は難しいでしょう。


たとえオリジネーターが保有している時の利回りが良くても、流動化できない可能性もあります。

また訴訟などのリーガルリスクがある資産も、証券化には向いていません。

ちなみに住宅ローン債権の証券化が好まれるのは一件あたりの取り扱い金額が大きいことに加え、他のローン債権に較べて延滞率が低いことが知られているためです

倒産隔離は絶対!

証券化に倒産隔離は絶対!

先ほども説明した通り、投資家を保護するためにも、対象資産の倒産隔離は証券化で絶対条件です。

倒産隔離は、対象資産の信託化を通じて行われることも、先ほど見た通りです。


倒産隔離の要件を満たすには、オリジネーターが確かに資産を売却していること(=「真正売買」)が条件となります。

というのも、倒産隔離が不十分な状態で証券化をすると、対象資産を担保とした借入と見なされ、資産が切り離された(=オフバランスになった)と見なされません。


真正売買にあたっては、以下が条件とされています。

  • 所有権移転登記(不動産などの場合)
  • 当事者の意思(不動産の買戻特約や修繕費負担の有無など)
  • 取引価額の妥当性
  • 5%ルール


この内、5%ルールを簡単に説明します。

対象資産(の信託受益権)をSPCに売却した際に、そのSPCへの出資を受け入れることになります。


このSPCへの出資比率の内オリジネーターが5%を超えると、対象資産へのコントロール権を保持していると見なされ、真正売買とは見なされません(つまり、倒産隔離もされてない)。

倒産隔離を実現するにあたって、対象資産の真正売買が成立していることが条件となります。

先ほども触れましたが、SPCに資産売却したオリジネーターがSPCに5%以上出資してる場合、流動化ではなく資産担保融資とみなされます


ここまで資産の流動化(証券化)の基本や、メリット・注意点について見てきました。

流動化の対象となる資産は収益資産なので、それを切り離すことは一定の収益機会を失うことを意味します。


加えて、流動化の手続きがそれなりに手間なのも、上で見た通りです。

それでも流動化によって切り離しの対象となる資産が大幅に増えたこと、資金調達や資産圧縮の手法が増えたことは、企業や金融機関にとって大きなメリットです。

今後さらに、流動化の市場規模が拡大していくことが予想されます。


この記事のまとめ
  • 資産の流動化とは、企業が保有する資産を投資家に小口売却し、資産圧縮・資金調達するための手法
  • 流動化の対象資産は収益が見込める資産で、全体の8割はRMBSとショッピング・クレジットが占める
  • 流動化により企業(金融機関)は、それまで売却・資金化の難しかった資産も可能になった
  • 投資家からすると、流動化により過去には難しかった資産への投資が可能になった
  • 証券化にあたっては、対象資産の倒産隔離が条件


もぐお

この記事の執筆者: もぐお

元銀行員で、このサイトの責任者です。難しい金融の情報を分かりやすくお伝えできるよう、頑張ります!
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