ノンリコースローンとは?分かりやすく解説

不動産投資を多少でも勉強した人なら、「ノンリコースローン」という言葉を見かけた人もいるかもしれません。

ノンリコースローンとは、非遡及型融資とも呼ばれる融資です。


遡及という言葉は、中々ピンとこないですよね。

今回はノンリコースローン(非遡及型融資)の基本と、メリット・デメリットについて紹介します。


ノンリコースローン(非遡及型融資)とは?キホンを解説

ノンリコースローンとは?

ノンリコースローンとは

ノンリコースローン(非遡及型融資)とは、「責任財産」の収益力(キャッシュフロー)から算定される金額を基に融資を行い、その範囲内に返済責任を限定する貸付方法です。

責任財産とは、収益力のある不動産が一般的ですが、継続的に収益を生み出す企業や動産、債権の場合もあります。


責任財産のそうした収益力を裏付けに貸出を行い、返済が不能になった場合は、その責任財産の処分を超える返済を求めない手法です。


こうしたノンリコースローン対して通常のローンは、リコースローンと呼ばれます。

リコースローンの場合、借主が返済できなくなった際は、借入残高の全てに返済責任を負います


担保物件がある場合は、それを(競売などで)処分して返済原資に充てます。

それでも借入残高が残っている時は、その分について債務者が引き続き返済義務を負います。


しかしノンリコースローンでは、責任財産を処分した後の借入残高について、返済を請求されることはありません。

貸主は責任財産の他に借主自身に遡って(さかのぼって)、請求できないのです(=遡及されない)。


この特徴から、ノンリコースローンは「非遡及型融資」とも呼ばれます。

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日本では2006年に、ソフトバンクがボーダフォン日本法人(現在のソフトバンクモバイル)を買収する際に、このノンリコースローン(のLBOファイナンス)で資金調達しました

責任が限定されるとは?

ノンリコースローンの責任が限定されるとは

ノンリコースローンの「責任が限定される」とは、どういう意味でしょうか?

以下の例を用いて説明します。

A社:収益不動産に10億円のノンリコースローンを設定
B社:収益不動産を担保に10億円の借入(通常融資)
収益不動産の時価:6億円(A社・B社どちらも)



A社・B社は順調に返済を進めたものの、借金が残り8億円まで来たところで、返済不能に陥りました。

ノンリコースローンでもリコースローンの場合でも、まずは担保にしていた6億円の不動産を売却して返済に充てます。


返済残高は2億円になりますが、ノンリコースローンの場合、これがチャラになってA社の返済が終了します。

一方のB社のリコースローンでは、引き継ぎ2億円の返済責任を負います。


B社は2億の借金が原因で倒産するかもしれないのに、A社はノンリコースローンによる倒産リスクがありません。

ただしA社は、仮に倒産することになっても、10億円の収益不動産が他の債権者に差し押さえされないよう、A社とはリスクを切り離す必要があります。


こうした措置を、「倒産隔離」と言います。

このように責任範囲が限定されているか否かという点が、両者の決定的な違いです。

ノンリコースローンが使われる場面

ノンリコースローンが使われるのは、たとえば以下のような場面です。

  • リスクを抑えた上での収益案件への投資
  • 保有不動産を切り離し上での継続利用(所有から賃貸へ)
  • 債権の流動化(=資金調達)


一つずつ見ていきます。

<リスクを抑えた上での収益案件への投資>
収益案件に投資したいものの、そのための資金調達を自社で借入したくない場合に使います。

先に挙げたソフトバンクの事例がそうで、携帯電話の事業が仮に失敗しても、損失の負担は限定的で済みました。


<保有不動産を切り離し上での継続利用(所有から賃貸へ)>
自社ビルを保有しているものの下落の心配もあり売却したい、でも今後も使い続けたいと考える企業があるとします。

こんな時、別会社を設立して自社ビルを売却します。


別会社は、銀行からのノンリコースローンをビルの購入代金にあてます。

その企業は毎月の賃料を別会社に払い続けることで、そのビルでの事業を継続できます(「セールス・アンド・リースバック」)。


<債権の流動化>
不動産の投資会社が、手早く資金調達を行いたい、でも借入を増やしたくないとか、資産売却による資金化が難しいとします。

こんな時、投資会社は保有する商業ビル10棟をまとめて別会社に売却して(厳密には、収益を得る権利を売却)、資金調達を行います。


別会社は商業ビル10棟の賃料収入を裏付けに、ノンリコースローンで購入代金の大部分の資金調達をします。

商業ビルの購入代金の残りは、賃料収入の債権を小口化して投資家に販売し、その購入代金を充てます。

こうした手法は「債権の流動化」として、知られています。

2006-2008年頃に、格付け会社のお墨付きを得た小口の債権が全世界の金融機関に販売されましたが、リーマンショックの影響で紙くずとなり、世界規模の大不況に突入しました

ノンリコースローンの仕組みは?

ノンリコースローンの仕組みは?

ここでは先ほど挙げた、保有不動産の切り離しにノンリコースローンを使う例で説明します。

ノンリコースローンの参加者(一例)
  • オリジネーター: 自社ビルを保有するA社
  • 銀行: ノンリコースローンを出すB銀行
  • 特定目的会社: 不動産の信託受益権を購入するC社
  • 信託銀行: 自社ビルの運用管理するD信託銀行
  • 投資会社: 限られたリスクで投資したいE社


まずA社は、保有する自社ビルの運用管理をD信託銀行に信託し、代わりに自社ビルの信託受益権(=毎月の家賃を得られる権利)を取得します。

次にA社は、今回の案件のために設立された特定目的会社(SPC)のC社に信託受益権を売却し、自社ビルを(事実上)売却した形になりました。


なおSPCが購入する資産を出す参加者は、「オリジネーター」とも呼ばれます。

C社が信託受益権を購入する代金の大部分は、ノンリコースローンでD銀行から資金調達します。


購入代金の残りは、E社からC社に出資の形で調達します。

これにより、E社はC社(ビル物件を保有)に対するコントロール権と配当を得ます。


これでA社は自社ビルを資産から切り離すことができ、賃料を払うことでビルを使い続けられます。

E社は賃料収入の大半をノンリコースローンの返済にあて、残りを配当として受け取ります。


万が一、賃料収入が見込めなくなってC社が破たんした場合でも、ノンリコースローンの損失をE社が負担する必要はなく、出資分の損失で済みます

ちなみにC社を事業会社ではなく特定目的会社にしているのは、こうした方が税金上、安くできるためです。

<関連記事>:信託銀行とは?わかりやすく解説します

ノンリコースローンとリコースローンの違いは?

ここまでノンリコースローンの内容や、リコースローンとの違いを説明してきました。

以下では、改めて違いを表にまとめました。

ノンリコースローン リコースローン
融資対象 特定目的会社 借主
責任範囲 責任財産の範囲内 全額返済
審査ポイント 収益性 借主の返済能力など
連帯保証人 原則不要 必要な場合あり
返済期間 短い(3~5年) 自由
金利 高め 低め
融資最低金額 10億円程度から 自由

上で見た通り、ノンリコースローンの融資対象は特定目的会社(SPC)になり、借主自身とはなりません

リコースローン(通常融資)が借主の返済能力や(ある場合は担保・保証人)を審査ポイントにするのに対し、ノンリコースローンは責任財産の収益性が審査対象になる点は、先ほど説明しました。


また通常の融資が幅広い融資条件の設定が可能なのに対し、ノンリコースローンは責任が限定されるものの、返済期間・金利・融資額などに自由度がありません

ノンリコースローンの契約内容は?

ノンリコースローンを利用する際は、責任財産限定特約と制限条項(コベナンツ)が契約書に盛り込まれます。

責任財産限定特約は、ノンリコース条項とも言われ、責任財産のみに請求が行くことを定めた規定です。


この特約を結ぶということは、その融資がノンリコースローンであることを意味します。

責任範囲がどこまで限定されているか、しっかり確認しておくことが大切です。


制限条項(コベナンツ)とは、金融機関が借主に対して課す義務や制限などの条件のことです。

この条件に違反した時、金融機関は(原則として)一括返済を求めることができます。


一口にコベナンツと言っても、その内容は純資産額やキャッシュフローにまつわるものなど様々です。

借主に不公平など不利な契約になっているか、契約前に入念にチェックしましょう。

<関連記事>:コベナンツ(条項付融資)とは?分かりやすく解説!

ノンリコースローンは回収がより困難ため、コベナンツも自然と厳しい条件となります



ノンリコースローンによる借り手企業のメリットは?

ノンリコースローンによる借り手企業のメリット

責任範囲が限定される(が、倒産隔離は必要)

責任範囲が限定されることがノンリコースローンの最大の特徴であり、借り手にとって最大のメリットになります。

通常の融資では、担保を売却しても残高がある場合には、他の事業や資産を売り払う必要も出てきます。

それでも返済できない場合は、法的整理に追い込まれます。


一方のノンリコースローンであれば、責任財産の範囲外に一切影響が出ません

ただ借主が倒産しても責任財産が差し押さえを受けないよう、リスクを切り離す(=倒産隔離を満たす)必要があることは先ほど説明した通りです。

<関連記事>:借金返済ができない場合、どこに相談すれば良い?

責任財産の価値が下落しても追加請求がない

たとえノンリコースローンで設定した責任財産の価値(厳密にはフェアバリューと言います)が下落しても、債務者は下落分を負担する必要はありません

例えば6億円の不動産を責任財産として、10億円のノンリコースローンを受けたとします。


返済残高が8億円の時点で返済不能になったので、不動産を売却して返済原資にあてることになります。

ところが契約時には6億円だった不動産価値が、4億円にまで下落していたとします。

契約時から2億円も安くなってしまいましたが、責任財産の下落分の返済請求は発生しません。


このように借り手企業が、責任財産の下落リスクまで負う必要は一切ありません。

上の例は責任財産の価値を売却代金で説明していますが、毎月のキャッシュフローから収益資産の価値を算出するCDF法と呼ばれる手法もあります

申し込みのハードルが低い

ノンリコースローンの審査では、責任財産の収益性は厳しく精査されますが、債務者自身の返済能力はそれほど重要視されません。

そのため例えば年収が低めな若手投資家などでも、(銀行から評価されやすい)責任財産さえ設定できれば、ノンリコースローンで融資を受けることは可能です。


連帯保証人も不要なので、申し込み自体のハードルは比較的低いと言えます。

<関連記事>:保証人なしで借金!お金を借りるための条件は?



ノンリコースローンによる借り手企業のデメリットは?

審査の難易度が高い

ノンリコースローンによる借り手企業のデメリット1

ノンリコースローンの審査では、返済能力が問われない一方で、責任財産の収益性が厳しく精査されます

責任財産は不動産であることが多いですが、企業や動産(船舶、航空機など)、債権(家賃収入など)に設定されることもあります。


例えば不動産の場合、物件の現在価値・立地・権利関係・収支状況・物理的状況など、様々な観点から査定されます。

貸主側は資産価値の下落リスクも最小化にしたいので、長期的視点でも厳しくチェックされます。


先ほどの説明でも見た通り、通常の融資が借主の返済可能性に注目するのに対し、ノンリコースローンは責任財産(収益物件)の収益力に注目します。

不動産であれば収益の査定がしやすいのに対し、たとえば企業の収益力の査定は難しいです。


こうした事情もあり、ノンリコースローンの対象物件は不動産が多いことと、(後でも説明する通り)ノンリコースローンを扱える金融機関が限られてきます

担保主義が基本だった日本の銀行では、収益力で物件を評価するという発想が1990年代まで存在せず、審査ノウハウがいまだに乏しいのが実情です

金利が高い

責任範囲が限定されるノンリコースローンは、金融機関にとってリスクの高い融資です。

元本が回収できる可能性が下がるため、その分リスクに見合う高めの金利が設定されます


銀行によって基準は違うものの、通常融資に比べて数倍の金利が設定されてる場合がほとんどです。

ただし借主から見ると利息負担が重いということは、金融機関から見た収益性が高いということはイコールです。


昨今のような「異次元金融緩和」の影響で相応の金利収入が期待できない銀行にとって、ノンリコースローンは貴重な収益源の一つとなっています。

<関連記事>:カードローン金利の仕組みを元銀行員が解説

融資条件が厳しい

ノンリコースローンによる借り手企業のデメリット2

ノンリコースローンの金利は高めですが、それだけでは金融機関のリスクを補えません。

コベナンツの設定は、まさに貸し倒れリスクを補完するためです。


自己資本比率や純資産額の維持など、これさえ遵守していれば倒産はしないと思われるラインを定めています。

またノンリコースローンの審査は通常の与信審査に較べて難しい(し時間がかかる)ため、融資最低金額は10億円程度と高めになっています。


さらに返済期間が10年を超えるような、長期の契約はほとんどありません。

あまりに長期間の貸付では、その間に責任財産(収益物件)の収益環境がブレる可能性も高まるためです。

取り扱っている金融機関が少ない

借り手企業のメリットが大きいノンリコースローンですが、取り扱っている金融機関は極めて少ないのが実情です。

メガバンクや政府系金融機関、一部の外資系銀行などに限られます。


理由は先ほども説明した通り、ノンリコースローンの設定には高い審査能力が求められるため、そうした基準を満たす金融機関が少ないためです。

地方銀行や信用金庫では、ほとんど取り扱っていないと考えて下さい。


最近では不動産以外にも、航空機・船舶・トラック・トレーラーなどのノンリコースローンが始まっています。

ですが企業を対象としたノンリコースローンの利用は日本では実績に乏しく、今後の広がりに期待したいところです。

1950~60年代頃は企業の成長性に賭ける気骨のある銀行員もそれなりにいたらしいですが、80年代には不動産の担保主義に特化した審査手法が主流になり、銀行員の審査能力の低下が顕著となりました


ここまでノンリコースローンの基本と、メリット・デメリットについて見てきました。

借り手企業に大きなメリットがある融資形態ですが、金利や融資条件などはその分厳しめです。


無理のない契約内容かをよく確認した上で、有効活用してみてください。


この記事のまとめ
  • ノンリコースローンとは責任財産の収益力を裏付けにして、返済不能時に責任財産を超える請求が発生しない融資
  • 責任財産として不動産が一般的だが、動産・債権・企業も対象となりうる
  • ノンリコースローンが使われるのは、保有資産の切り離し、リスクを抑えた投資、資産の流動化(資金調達)など
  • 審査では責任財産の収益性が重視され、借主の返済能力は問われない
  • ノンリコースローンの金利は高く、コベナンツも付くことが一般的


もぐお

この記事の執筆者: もぐお

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