【図解で分かる】コベナンツ(条項付融資)とは?分かりやすく解説!

銀行HPや新聞などで、「コベナンツ」という言葉を目にした人もいるかと思います。

コベナンツとは簡単に言うと、金融機関による法人融資の際に設定される「約束事」のことです。


説明だけ聞いてもピンと来ないかもしれませんが、実は取引に大きな影響を与えています。

ここではコベナンツの基本や、コベナンツが取引に与える影響について解説します。


コベナンツ(条項付融資)とは?キホンを解説

コベナンツとは?

コベナンツとは

「コベナンツ」とは、社債や融資などで法人が資金調達をする際に、契約書に記載される債務者側(企業)の義務や制限などの特約条項のことです。

たとえば経営に不安のある会社への融資では、貸したお金が帰ってこない可能性もあり、貸す側である金融機関のリスクがより高くなります。


貸す側は貸し倒れリスクを最小化するために、コベナンツを設定することで、借り手に義務や制限を課すのです。

後ほど説明しますが、一口にコベナンツと言っても様々な種類があります。


中でも代表的なのは、「財務制限条項」と呼ばれるものです。

多くのコベナンツではこの条項が含まれるため、銀行などは財務制限条項をコベナンツと同義で用いている場合もあります。

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コベナンツ(Covenants)という語本来の意味は、「誓約」です

コベナンツ条項が生まれた背景は?

実はコベナンツ条項は、古くから存在していた訳ではありません。

誕生のきっかけとなったのは、1990年代初頭のバブル崩壊でした。


バブル崩壊以前では、企業と銀行との関係は「メインバンク制」が主流でした。

メインバンク制とは、企業が特に重点を置いて取引をする銀行を1行に定め、両者が密接な関係を維持するという慣習です。


しかしバブル崩壊に伴いメインバンク制が立ち行かなくなり、企業と銀行の関係性は大きく変化しました。

企業はこれまで取引機会の薄かった銀行や、社債で資金調達をする必要性が出てきたのです。


こうした事情は銀行も同じで、これまで取引機会の少なかった(=信頼関係が不十分な)企業への融資チャンスが増えることになりました。


ただ信頼関係が十分でない企業との取引では、貸し手である銀行側のリスクが非常に大きいということで誕生したのが、コベナンツ条項です。

取引における義務や制限を定めることで、少しでも貸し倒れリスクを減らそうとしたのです。

コベナンツが使われる場面は?

上でも書いた通り、コベナンツは法人融資や社債での資金調達の際に、契約書に記載されることがあります

ただ、これ以外に以下の3つの融資でもコベナンツがよく使われます。

  • シンジケートローン
  • プロジェクトファイナンス
  • LBOファイナンス


<シンジケートローン>
「シンジケートローン」とは、企業の資金調達ニーズに対して、複数の金融機関が共同の融資団(シンジケート団)を組成し、融資を実行する手法です。

シンジケートローンでは企業と金融機関で取引関係がない場合もあり、また無担保で融資が行われるケースが多いです。

そのため金融機関は貸し倒れリスクを減らすために、コベナンツ条項を使うことが多いです。


<プロジェクトファイナンス(プロファイ)>
「プロジェクトファイナンス」とは、企業の特定の単一事業や公共事業に対して融資を行う手法です。

言わばこの融資では、特定のプロジェクト自体が「担保」になります。

ですから特定のプロジェクトが円滑に運営されるように、プロジェクトの阻害要因を排除する目的で、コベナンツ条項が使われることが多いです。


<LBOファイナンス>
「LBOファイナンス」とは、企業の買収の際に、買収資金の大部分を金融機関からの融資で調達する手法です。

この手法を使えば、少額の自己資金での買収が可能です。


LBOファイナンスにおける担保は、買収先の企業です。

ですから無理な経営で買収先企業が倒産しないように、借り手企業の投資を制限する目的で、コベナンツがよく使われます。

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いずれの場合でも、コベナンツ条項は借り手企業の「監視」の意味もあります

コベナンツ条項に違反するとどうなる?

コベナンツ条項に違反するとどうなる

コベナンツ条項への違反は、「期限の利益喪失事由」に該当します

期限の利益とは、決められた返済を行っていれば、約束した期日までは請求を受けることはないという債務者の利益(権利)です。


つまりコベナンツ条項違反によって期限の利益を喪失すると、借主は一括返済が求められます

ただ最近では、ただちに一括返済を要求されないケースもあります。


まずはコベナンツ条項の期限猶予や、条項の見直し・再設定など、企業に経営改善を求める場合が多いです。

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コベナンツの種類は?

コベナンツ条項の役割は大きく分けて、「義務」と「制限・禁止」の2つに分類されます。

「義務」はアファーマティブ・コベナンツと呼ばれ、債務者が借入期間中にすべきことを示します。


義務に該当するコベナンツとして、具体的には以下の条項が挙げられます。


  • 確約条項(事業計画やその変更内容の報告・開示)
  • 事業維持条項(事業許可の維持・事業の維持)
  • 財務制限条項(自己資本比率の維持・前決算の○○%維持など)

特に財務制限条項は、ほとんどのコベナンツに含まれます。

自己資本比率の維持など貸借対照表に係るものや、前決算に対して一定割合の維持などの純資産維持に係るものがあります。


「制限・禁止」はネガティブ・コベナンツと呼ばれ、借入期間中にやってはいけないことを示します。

例えば以下の条項が挙げられます。

  • 事業維持条項(事業関連契約の変更・解除禁止)
  • 担保制限条項(契約期間中の担保提供の禁止)
  • 資産譲渡制限条項(資産の無断売却の禁止)

よく見ると「義務」と「制限・禁止」の両方に、事業維持条項が含まれていることに気づくかと思います。

実は、条項の名称はあくまでも表面上の区分でしかありません。


同じ名称の条項でも具体的に定められている条件が違うので、注目すべきは条項の中身です。

どんな条項を採用するかは、企業と銀行の交渉によります



金融機関がコベナンツ条項付融資を行う理由は?

金融機関のメリット1. 信用リスクの管理

金融機関がコベナンツ条項付融資を行う理由

コベナンツによる金融機関の最大のメリットが、信用リスクの管理です。

金融機関にとって何よりも避けたいのは、借り手企業の突然の倒産です。


銀行は融資の際には、対象企業(やプロジェクト)のリスクを多方面から評価します。

それでも予期せぬ不祥事や、(新型コロナ肺炎のような)大規模な災害により、企業の経営が急激に悪化することもありえます。


こんな時に銀行としては債権を即座に回収したいところですが、企業が通常通りに返済をしていれば、(期限の利益により)返済を求めることが出来ません。

ところがコベナンツを事前に設定していれば、経営悪化した企業(やプロジェクト)に対して迅速な債権回収が可能となります。


つまり融資の際に、銀行にとって保険の役割となるのがコベナンツです。

信用リスクをゼロにはできないけど、コベナンツで設定することで、銀行は信用リスクを効率良く管理しているのです。

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ただ後で見る通り、企業側から見るとコベナンツの存在があるおかげで、常に回収リスクに怯えることになります

金融機関のメリット2. 銀行取引約定書の補完

通常は新たに融資を始める際、企業と銀行との間で、「銀行取引約定書」という契約書を事前に締結します。

銀行取引約定書とは、「期限の利益の喪失条項」など、いざとなれば金融機関の利益が守られるような、基本的な約束事が定められた契約書で、全銀協で用意したひな形が存在します。


通常の融資にはこれが適用されるので金融機関は安心してお金を貸せますが、シンジケートローンの場合は銀行取引約定書が原則として適用されません。

そこで金融機関はコベナンツを付けることによって、銀行取引約定書の役割を補完します。


コベナンツ条項への違反は「期限の利益の喪失」に該当するので、銀行取引約定書と同様の効果を得ることになります。

金融機関のメリット3.リスクの高い融資が可能に

金融機関はコベナンツを付けることで、リスクの高い融資も可能になります。

信用リスクをより管理しやすくなるので、中小企業向けやLBOファイナンスであっても、高額融資のリスクを取りやすくなります。


とりわけ地域の中小企業への融資は、地域の活性化にもつながるなど、一定のメリットがあります。

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地方の金融機関の理念である中小企業の育成支援にも合致します

金融機関のデメリット1.融資管理の負担が増える

金融機関がコベナンツ条項付融資を行うデメリット

コベナンツのデメリットとして、融資管理の負担が増えることが挙げられます。

コベナンツ条項付融資の場合、コベナンツを遵守しているか、定期的かつ継続的にモニタリングする必要があります。


厳しいコベナンツを付けることで貸し倒れリスクは減りますが、その分だけ管理負担も増加してしまいます。

コベナンツを付ける際は、回収リスクと監視負担とのバランスを考慮することが大切です。

金融機関のデメリット2. 融資企業との関係構築が難しくなる

コベナンツのもう1つのデメリットとして、融資企業との関係構築が難しくなることが挙げられます。

コベナンツ条項付融資は、自己資本比率にまで気を配るなど、通常の融資に比べて条件がかなり厳しいです。


金融機関による「監視」の色も強まるので、相手との取引がビジネスライクになりがちです。

日本の銀行は相手企業に融資をすることで、融資以外のビジネスチャンス(M&A手数料、為替、運用提案など)につなげます。


相手先企業としても「融資のある銀行だから」という理由で、そうした提案に耳を傾けます。

ですがコベナンツ付融資の場合、こうした「温情」に期待するのは難しいかもしれません。

(通常)融資を受けている銀行からの提案をより真剣に検討する企業文化が、欧米に較べて日本は強いです。



借り手企業がコベナンツ条項付融資を利用する理由は?

借り手企業がコベナンツ条項付融資を利用する理由

借り手企業のメリット. 無担保でも高額借入が可能

上で見たように、コベナンツ条項付融資は金融機関にとってリスクを小さくできます。

言い換えれば、信用力が多少劣る企業やプロジェクトでも、銀行融資が受けやすくなります。


信用リスクが高いため通常なら融資を受けることが難しい企業でも、コベナンツが付くことで、好条件(無担保・無保証・ノンリコースなど)での高額融資を受けられる可能性が上がります


たとえ高金利でも融資を受けたいと思っている企業(やプロジェクト)なら、コベナンツ付きでも融資を受けたがるでしょう。

コベナンツを遵守する負担はありますが、事業リスクが高い企業にとって借入の恩恵はやはり大きいです

借り手企業のデメリット1. 金融機関の監視が厳しくなる

コベナンツ条項付融資の借り手企業のデメリットとして、金融機関による監視の厳格化が挙げられます。

例えば事業維持条項が付与された場合、契約外の事業変更は認められないので、臨機応変に事業展開をするのが難しくなります。


LBOファイナンスにおけるコベナンツでも、自由な投資が制限されるので、思い切った投資戦略は取りづらくなります。

借り手企業のデメリット2. 事業の不安定性が増す

通常の法人融資であれば、融資先企業の経営状況が一時的に悪化しても、融資を銀行から打ち切られる可能性は低いです。

しかしコベナンツ条項付融資だと、経営が悪化してコベナンツに違反したとみなされれば、資金の一括返済を求められるリスクがあります


ただでさえ事業がコベナンツに縛られる上、コベナンツ違反によるペナルティが非常に大きいので、事業の不安定さは増してしまいます。



ここまでコベナンツの基本や、コベナンツが取引に与える影響について見てきました。

企業がコベナンツ条項付融資を利用すれば、高額借入がしやすいなどの大きなメリットがあります。


一方で事業の自由度が下がるというデメリットもあり、一長一短の融資と言えます。

コベナンツ条項付融資を検討する際は、詳細条件を通常融資としっかり比較することが大事です。


この記事のまとめ
  • コベナンツとは融資の際、金融機関が債務者に課す義務や制限の特別条項のこと
  • 違反すると「期限の利益の喪失」に該当し、一括返済を求められることも
  • 自己資本比率の維持、投資の制限、事業の変更禁止など様々な種類がある
  • 金融機関はコベナンツによって貸し倒れリスクを減らせるが、管理コストは増加する
  • 信用力に劣る企業でもコベナンツにより高額借入がしやすくなるが、事業の自由度は低下する


もぐお

この記事の執筆者: もぐお

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